自民・岸田文雄氏 コロナ禍の経済は“株主資本主義”を改め「より分配を意識」〈AERA〉
https://news.yahoo.co.jp/articles/9805b0336d0c6b5092100c858229b2aa6a3d9a27
自民党総裁選の日程が26日に決まる。無投票を求める声もあるが、動きが注目される岸田文雄氏(64)に、総裁選への意欲や政策について聞いた。AERA 2021年8月30日号の記事を紹介する。
──政府の新型コロナウイルス対策は、どう考えていますか。
菅総理を中心に目に見えない敵との戦いに最善を尽くしていると思います。一方で国民の不安も広がっていることも事実です。よりしっかりと感染防止、経済対策を進めていかなければいけません。感染防止については、ワクチンの接種は大変有効ですし、その点については、菅総理も強いリーダーシップを発揮していると思います。
──対策が後手に回っているとの指摘があります。
しっかりと国民に説明し、国民に共感してもらい、国民に協力してもらわなければ、どの政策もうまくいきません。国民の協力につなげていくことに、より努力をしていくことが大事なのではないでしょうか。
──具体的な対策は。
ワクチンだけでなく、病床の拡大、新規感染者の拡大防止、治療薬の開発も力を入れなければいけません。その四つの切り口をバランスよく進め、具体的な進展を示していくことが国民の安心につなげていくために重要です。地域や業種にとらわれない、事業の規模や減収の規模を勘案した支援策が求められる。こういったものをパッケージとして示すことが大事です。
■株主資本主義を改める
──6月に「新たな資本主義を創る議員連盟」を立ち上げました。
アベノミクスは日本の経済を成長させた大きな政策だったと思っています。ただ、現代の資本主義は子どもの貧困をはじめ格差の問題、分配の問題が大きな課題です。こうした格差によって消費が拡大しない、経済の好循環が完成しない。格差によって政治や社会が不安定になっていると指摘されてきました。
そして新型コロナが追い打ちをかけ、格差を拡大させてしまった。これからまた経済を成長させることを考えた場合、分配についてもしっかり考えていかないと、ますます今の資本主義の問題点を大きくしてしまう。格差の問題に適切に対応することによって、社会の一体感をしっかり確保していく必要があると強く思っています。
──どんな政策を考えていますか。
民間における分配を考えた場合、株式会社のありようも考えなければいけません。新自由主義・市場原理主義のもとで、成長の果実は株主、あるいは経営者が独占することが正義であるかのようになっています。そうではなくて、従業員や地域、取引先など様々なステークホルダーに果実が分配される株式会社、資本主義を考えていく必要があります。
税制においては、高所得者層と中間層、低所得者層の間で適切に分配が行われているのだろうか。所得が1億円を超えると税負担が下がる「1億円の壁」が指摘されてきました。住宅や教育の負担は中間層が最も大きいとの指摘もあります。欧米では、新築だけでなく賃貸や中古住宅の流通でも中間層を中心に支援しています。日本でもそうした切り口から支援することも考えられます。高等教育においても、(学費を所得に応じて後払いする)オーストラリアの「HECS(高等教育拠出金制度)」も導入したらどうか。
──アベノミクスでは、豊かな者が富めば貧しい者にも富が滴り落ちるという「トリクルダウン」が言われていました。
アベノミクスだけじゃなくて、小泉政権時代の新自由主義、経済対策が成長という意味では、大きな意味があったと思います。ただ、トリクルダウンは起きると言ったけれど、少なくとも今はまだ起きていない。新型コロナで格差が大きくなったんだから、より分配を意識しないといけません。
──自民党の長年の政策を変えるということですか。
いや、自民党は経済の成長をリードした点では大きな役割を果たしたと思います。分配するものもつくらずして分配と叫んでも、国民は誰もついてこなかったというのが今の野党のありようです。自民党が分配を言ってこそ、具体的な結果につながると信じています。
──「自助・共助・公助」を掲げる菅首相への対抗ですか。
菅さんとの対立軸ということで政策を考えていません。自助という考え方は大変重要な考え方だと思いますが、私たちはコロナ禍の中で改めて家族や仲間の協力や絆の大切さを痛感しました。お互いに助け合う社会、温かみのある社会、友情や協力の温かさを感じられるような社会もしっかり目指していかなければいけないと思っています。
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